イニシエーションの火~映画「ミツバチのささやき」~
「ミツバチのささやき」という映画がある。
スペイン内戦直後の1940年のスペインの片田舎を舞台に二人の少女の成長を描く映画だ。
今回はこの映画について一言。
この映画を語る観点はたくさんある。
でも、とりあえず言いたいのは、映画全編を通して「しん」としていること。
BGMはほとんど聞こえてこない。台詞も抑えられ、少女二人の会話の多くははささやき声で語られる。
そして、カスティーリャ地方の乾いた、でも言いようもなく美しい風景、コントラストが強い光と影、その描写がすばらしい。そしてそこにはやっぱり音がない。
一本の映画が、一枚の不朽の名画のようなイメージなのです。
そこには寂りょう感やこの時代の鬱屈した雰囲気が見事に表現されていると思う。
昨今の、ストーリー展開優先で面白さ満載の映画作りとは一線を画している。(それはそれで面白いけどね…)
この映画の醸し出す雰囲気に似た映画は、今のところ僕には見つけだせていない。
その中の印象深いシーンを一つ。
夕暮れの中、数人の少女が輪になってたき火を跳び越す遊びをしている。主人公の一人アナが自分はその輪に加われず、その様子をじっと眺めている。
たき火を跳び越す遊びは、おそらく少女らの成長を暗示している。
「しん」とした映画ファンの方には絶対お勧めの一本です。
でも、とっても残念なことにレンタルビデオ屋ではなかなかお目にかかれません。自分も昔DVDからダビングしたよれよれのビデオテープしか持ってないのです…